帰社して…

夕方に帰社。
テラスに出ると、美しい黄昏時であった。
澄んだ空気の中でゆっくりと宵が始まっていく。

この瞬間、瞬間、余りに印象的に思える光景こそ、
写真に遺すよりも、言葉で遺したいと願う時がある。

雲一つない夕暮れ時の空がゆっくりと沈んでいく様。
東の空が濃紺からダークブルーに染まり始めると、
もう、西の空は黄昏から夕焼けへと変容している。
杏色とセルリアンブルーの描く透明なグラジェーション。
それが立ち並ぶビルを影絵の様にして、微妙な色彩の遊びを見せている。
本当に束の間の、余りに美しい自然の芸術。
ぼんやりしているうちに、空は澄んだ限りなく黒に近い藍の空間に変容してしまう。
煌々と輝いている精巧な白金細工の様な月だけが、冷たい弧を描いて、街に夜の帳が降りるのを見守っていた。