真夜中の桜・・・

深夜に帰宅して、早速一枝の桜を活けてみる。
取り敢えず、細い花器に割りを入れただけで投げ入れる。
しなやかに弓を張った様な枝に沢山の蕾が恥じらいながら俯いていて、
僅かに数輪、綻び始めた桜の透き通る様に清らかな花びらを見せる。
殺伐とした荒れ放題の部屋に不釣り合いな程、凛としていながらも、
あえかな表情の桜の一枝。
その枝の周りだけが不思議な明るさを放っている様に見える。
こんな所にもまもなく訪れる桜の花盛り。
そうして、やがて来る満開の桜が織り成す淡い世界を夢に描きながら、
眠りに就く迄のひととき、微睡みの時間を過ごした。